「葬儀で有給休暇を使いたいと言われたとき、私たちは決して否定的な感情は抱きません。むしろ、その社員が自身の家庭生活を大切にしていることに安心感を覚えます」。都内の中堅製造業で10年間人事を務めるBさんは、穏やかな口調でそう語ります。Bさんによれば、人事部門が最も懸念するのは、休暇の申請そのものではなく、その「伝え方」と「周囲への波及効果」だと言います。急な不幸は誰の身にも起こりうる不可抗力であり、それを理由に有給休暇を取得することは当然の権利です。しかし、中には「権利だから当然だ」と言わんばかりの威圧的な態度で、引き継ぎも不十分なまま職場を去ってしまう社員も稀に存在します。Bさんは「そのような場合、残されたチームメンバーの間に不満が溜まり、結果としてその社員の復帰後の居心地が悪くなってしまうのが一番残念です」と指摘します。理想的な申請の形は、誠実さと透明性にあると言います。上司に対して「急な不幸により数日間有給休暇をいただきます。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と一言添えるだけで、職場の空気は大きく変わります。また、Bさんは慶弔休暇制度と有給休暇の使い分けについてもアドバイスをくれました。多くの社員は、まず慶弔休暇の有無を確認しますが、制度上は対象外であっても、有給休暇が残っていればそれを使うことに躊躇する必要はありません。人事としては、未消化の有給休暇が溜まりすぎるよりも、こうした重要なライフイベントで適切に消化されることを望んでいます。さらに、Bさんが明かした意外な本音は、「葬儀後のメンタルケア」への配慮です。身内を亡くした社員が、葬儀の翌日に無理をして出社し、ミスを連発したり、ふとした瞬間に涙を流したりする姿を見るのは、周囲にとっても辛いものです。そのため、人事としては「葬儀後にもう1日、有給休暇を余分に取って、心身を落ち着かせてから戻ってきてほしい」と考えている場合が多いのです。最近では、社員のウェルビーイングを重視する観点から、葬儀後の特別有給休暇を付与する企業も増えています。Bさんは最後にこう締めくくりました。「有給休暇は、社員が不幸を乗り越え、再び前を向いて歩き出すためのエネルギーを蓄える期間です。私たちはその権利を最大限に尊重したいと考えています。だからこそ、社員の皆さんも、遠慮せずに、かつ誠実に相談してほしいのです」。人事担当者の温かい視線は、制度という硬い枠組みの中に、人間としての慈しみを宿らせています。
人事担当者に聞く葬儀に伴う有給休暇申請への本音