参列者600人の葬儀を、混乱なく尊厳あるものにするために、葬儀社と実行委員会が最も知恵を絞るべきは、スタッフの配置と動線設計です。600人が動くという事象は、一つの小さな街が移動するようなものであり、物理的なボトルネック(詰まり)をいかに解消するかが勝負となります。まず、スタッフの配置ですが、通常の葬儀では3名から5名で済むところを、600人規模では最低でも25名から30名の要員を配置します。内訳としては、駐車場警備に5名以上、玄関での出迎え・案内(ドアマン)に3名、受付に8名から10名、ホール内での誘導に5名、会食会場の給仕に5名から10名といった構成です。各セクションのリーダーは無線インカムを装着し、「受付の列が屋外まで伸びました、誘導を第2駐車場へ回してください」「焼香が予定より早まっています、司会者にテンポを落とすよう伝えてください」といった情報をリアルタイムで共有します。動線設計においては、「一方通行の徹底」が基本です。600人の参列者が、受付→記帳→焼香→返礼品受け取り→退場(または会食会場へ)という流れを、一度も逆流することなく、かつ交差することなく進めるようにします。特に、焼香が終わった後の「返礼品渡し口」は最大の滞留ポイントになりやすいため、広い通路を確保し、複数のスタッフで同時に手渡す体制を作ります。また、VIPや高齢者、足の不自由な方のために、一般の600人の流れとは別のショートカット動線を用意しておくことも、ホスピタリティの観点から重要です。トイレへの誘導についても、ホールの収容人数600人に対してトイレが不足している場合は、あらかじめ近隣の公衆トイレや予備のトイレへの地図を掲示するなどの工夫をします。さらに、出棺の際の動線も緻密に設計します。600人が一斉に建物から外に出て霊柩車を囲むため、広いスペースを空け、車がスムーズに発進できるような安全距離を警備員が確保します。600人という圧倒的な質量をコントロールするには、言葉による案内だけでは足りず、矢印の看板や床の誘導テープ、さらにはロープによるパーテーションなど、視覚的に動線を支配する工夫が求められます。このように、裏方の緻密な計算と、全スタッフの一糸乱れぬ連携があって初めて、600人の参列者は「混乱のない、素晴らしい葬儀だった」という印象を持って、故人を偲ぶことに集中できるようになります。