葬儀においてベールを着用する場合、それは独立した布ではなく、帽子とセットで構成される「ヘッドドレス」としての作法が求められます。この組み合わせは、喪装における「格」を決定づける重要な要素です。まず、帽子の種類ですが、最もフォーマルなのはつばのない「トーク帽」です。これは頭にちょこんと乗せるような円筒形の帽子で、その周囲にベールをあしらうのが王道です。つばがあるタイプを選ぶ場合は、つばが非常に狭い「クローシュ」などが適しています。つばが広い帽子は、華やかになりすぎるため、たとえ黒であっても葬儀には不向きです。帽子の素材は、季節に応じて使い分けるのが上級者のマナーです。冬場はフェルトやベルベットといった重厚感のある素材が、夏場はストロー素材(ただし光沢のない黒に染められたもの)や、透け感のあるシースルー素材が選ばれます。ベールの取り付け方にも作法があります。ベールは帽子の前から垂らすのが基本ですが、食事の際や挨拶の際に邪魔にならないよう、後ろに跳ね上げることができる可動式のタイプが便利です。固定式の場合は、ベールの丈をあらかじめ調整しておき、鼻先までの長さにしておくのがスマートです。また、帽子を固定するためのヘアピンやコームは、黒いものを選び、外から見えないように隠すのが鉄則です。日本の葬儀会場は、玄関で靴を脱ぐことが多いため、帽子を被ったままでいいのか迷う場面もありますが、基本的に葬儀用の帽子は「正装の一部」として室内でも脱がないのが西洋式マナーです。ただし、日本の仏式葬儀で周囲がすべて和装や一般的な洋装である場合は、焼香の際などに軽く会釈をする程度に留めるか、雰囲気に合わせて柔軟に対応する配慮も必要です。また、ベール付きの帽子を着用する場合、手袋もセットで着用するのが望ましいです。黒いレースやナイロンの手袋を合わせることで、手元から頭先まで統一された喪のシルエットが完成します。1つのアンサンブルとして装いを整えることは、故人に対する敬意の深さを表します。ベールと帽子の調和を追求することは、悲しみの中にあっても凛とした姿勢を保とうとする、遺族の強い意志の現れでもあります。その姿は、参列者に対しても、死という事実を厳粛に受け止めるための静かな促しとなることでしょう。
葬儀のベールと帽子の組み合わせに関する作法