参列者600人を想定した葬儀を執り行うにあたって、避けて通れないのが費用の問題です。600人規模の葬儀は、一般的な家族葬(20人から30人)の予算とは桁が一つ異なります。まず、斎場の使用料だけで、大型ホールであれば30万円から100万円、さらにホテルを利用する場合は会場費と控室料でそれを上回ることもあります。祭壇についても、600人の視線を受け止めるに相応しい豪華な生花祭壇を設営すると、150万円から300万円程度が相場となります。しかし、最も変動が大きく、かつ大きな比重を占めるのが「飲食費」と「返礼品費」のいわゆる変動費です。600人分の返礼品を1つ3000円で準備すれば、それだけで180万円、通夜振る舞いや精進落としを1人5000円で提供すると、300万円の予算が必要になります。これに葬儀社の基本料金や搬送費、人件費、そして僧侶への布施などを加えると、600人規模の葬儀の総額は、控えめに見積もっても800万円、内容にこだわれば1500万円を超えることも珍しくありません。予算を組む際のポイントは、香典による補填を過信しないことです。600人の参列者から平均1万円の香典をいただいたとしても、総額は600万円であり、支出をすべて賄えるとは限りません。特に社葬の場合は、会社が費用を負担し、香典は遺族が受け取る、あるいは香典を辞退してすべての費用を福利厚生費や寄付金として処理するなど、税務上の戦略も重要になります。600人規模となると、受付や案内、駐車場警備、司会進行、音響など、当日動員するスタッフの数も20名以上となり、その人件費も数十万円単位で計上されます。予備費として、急な参列者の増加に対応するための返礼品追加費用や、当日の急な接待費など、全体の10%程度は余分に確保しておくべきです。また、600人規模の葬儀では、供花や弔電の取り扱い手数料など、細かな事務経費も積もり積もれば大きな額となります。葬儀社から提示される見積書は、項目が多岐にわたるため、600人という数字をベースに、1人あたりの単価が適正かどうか、そして予備の物資がどのように管理されているかを詳細にチェックする必要があります。費用は高額になりますが、600人の方々を招いて故人を送るという行為は、その金額以上の社会的価値と、遺族にとっての精神的区切りをもたらします。適切な予算管理の下で、無理のない、しかし故人の社会的地位に相応しい格調高い葬儀を演出することが、担当者や遺族に課せられた重い任務となります。