葬儀の現場では、どうしても領収書が発行されない性質の支出が発生します。しかし、相続税の計算においてこれらを使い道のない「死に金」にしないための実務的なテクニックが存在します。代表的なのが、お寺や神社、教会などの宗教者へ支払う「お布施」や「謝礼」です。これらは宗教法人の慣習上、領収書が発行されないことが一般的ですが、相続税法上はれっきとした葬儀費用として認められます。これを証明するための代替手段として、自作の「支払証明書」を作成することが有効です。この書類には、1支払日、2支払先(寺院名や僧侶名)、3支払金額、4支払目目(読経料、戒名料、お車代など)を明記します。また、葬儀の日程表やパンフレットを一緒に保管しておくことで、その儀式が実際に行われた裏付けとなります。同様に、火葬場の心付けや、手伝いをしてくれた近所の方への寸志、タクシー代なども、領収書が取れないことが多い項目です。これらもすべて、発生したその日のうちにメモを残しておくことが重要です。メモを使い道のある証拠書類にするためには、単なる日記のような書き方ではなく、客観的な事実を箇条書きで記すのがコツです。また、最近ではお布施を銀行振込で受け付ける寺院も増えており、その場合は振込明細書が最強の領収書代わりとなります。税務署は「実態として支払われたかどうか」を重視するため、不自然な高額支出でない限り、詳細な記録があれば基本的には認めてくれます。逆に、記録が一切ない支出については、どんなに主張しても控除は受けられません。領収書がないからと諦めてしまうと、本来払わなくてよい税金を多額に納めることになり、大きな損失となります。このように、領収書の代わりとなる資料を作成することは、遺族が行うべき重要な「節税対策」の1つです。また、こうしたメモは親族への報告書としても使い道があります。不透明になりがちな現金の動きを明らかにすることで、親族からの疑念を晴らし、信頼関係を維持する助けになります。葬儀費用は1つ1つが数万円、数十万円という単位になるため、こうした細かな記録の積み重ねが、最終的に数十万円の節税効果を生むことも珍しくありません。領収書がないことを前提とした準備を事前に行っておくことが、葬儀後の事務処理を成功させる秘訣です。