一日葬とはどのようなお葬式か
近年、葬儀の形式が多様化する中で「一日葬」という言葉を耳にする機会が増えました。これは、従来の葬儀が通夜式と告別式の二日間にわたって行われるのに対し、通夜式を執り行わず、告別式から火葬までを一日で完結させる新しい葬儀の形です。具体的には、ご逝去された後、ご遺体はご自宅や斎場の安置施設に安置されますが、参列者が集まるのは告別式の当日のみとなります。当日は、まず斎場などで宗教儀礼としての告別式に参列し、僧侶による読経や弔辞の奉読、お焼香などが行われます。その後、故人様との最後のお別れとして、棺にお花や思い出の品々を手向ける「お花入れの儀」を経て出棺し、火葬場へと向かいます。火葬場で最後の読経や焼香を行った後、火葬となります。火葬後には、ごく近しい親族で収骨(お骨上げ)を行い、場合によっては初七日法要を繰り上げて執り行うこともあります。この形式の最大の特徴は、言うまでもなく、夜通し弔問客を迎える通夜式とその後の通夜振る舞いがない点です。これにより、ご遺族は弔問客への対応に追われることなく、一日という凝縮された時間の中で、故人様とのお別れに集中することができます。また、通夜を行わないため、遠方に住む親族や高齢の参列者の身体的な負担も軽減されます。社会構造の変化や価値観の多様化を背景に、よりシンプルで、家族の負担を考慮したお別れの形を求める声が高まる中で、この一日葬は現代のニーズに合った合理的な選択肢として広く受け入れられつつあります。ただし、通夜という故人とゆっくり最後の夜を過ごす時間がなくなるため、決断する前にはその意味をよく考え、家族や親族と十分に話し合うことが何よりも大切になります。