滞りなく葬儀を終え、故人を見送った後、ご遺族には「費用」という現実的な問題が残ります。高額になりがちな葬儀費用は、一体いつ、どのような方法で、そして誰が支払うべきものなのでしょうか。この支払いのプロセスを事前に理解しておくことは、葬儀後のトラブルを避けるために非常に重要です。まず、支払いのタイミングですが、多くの葬儀社では、葬儀が終わってから一週間から十日以内を目安に、請求書が発行されます。そして、その請求書に記載された期日までに支払うのが一般的です。支払い方法は、かつては「現金一括払い」が主流でしたが、近年では銀行振込やクレジットカード払いに対応している葬儀社も増えています。また、高額な費用を一度に支払うのが難しい場合に備え、分割払いが可能な「葬儀ローン」を用意している葬儀社もあります。支払い方法については、契約前の打ち合わせの段階で必ず確認しておきましょう。次に、最も重要かつデリケートな問題が「誰が費用を負担するのか」という点です。法律上、葬儀費用を支払う義務は、葬儀を主宰した「喪主」にあると解釈されるのが一般的です。しかし、実際には、喪主が個人の財産から全額を負担するケースはむしろ稀です。多くの場合は、故人が残した遺産(預貯金など)から支払われます。ただし、ここで大きな壁となるのが「銀行口座の凍結」です。金融機関は、口座名義人の死亡を確認した時点で、相続トラブルを防ぐためにその口座を凍結します。そのため、葬儀の支払い時期までに、故人の預金を引き出すことができないのです。結果として、喪主や他の相続人が一時的に費用を立て替え、後日、遺産分割協議を経て、故人の遺産から精算する、という流れになるのが一般的です。また、参列者からいただいた「香典」を葬儀費用の一部に充当することも、広く行われています。香典には、ご遺族の経済的負担を相互に助け合うという意味合いも含まれているため、費用に充てることは何ら問題ありません。葬儀費用の負担については、法的な決まり以上に、親族間の話し合いが重要になります。誰が立て替えるのか、最終的にどのように分担するのかを事前に明確にしておくことが、後の相続トラブルを防ぐための最善策と言えるでしょう。
葬儀費用の支払いはいつ誰がするのか