長年、葬儀の現場に立ち会っていると、様々なご家族のお別れの形に出会います。中でも、葬祭扶助を利用した「福祉葬」は、私たち葬儀社の役割が特に問われる、非常に奥深い仕事だと感じています。限られた費用、限られた内容の中で、いかにして故人の尊厳を守り、ご遺族の心に寄り添うか。それが私たちの腕の見せ所であり、使命でもあります。福祉葬は、通夜も告別式もありません。祭壇に花を飾ることも、多くの会葬者が集うこともありません。しかし、だからといって、それが「みじめな葬儀」であっては絶対にならないのです。私たちは、ご遺体を安置する際、まるで生きているかのように安らかなお顔に整え、清潔な白装束を丁寧にお着せします。棺にご遺体を納める時も、一つひとつの所作に心を込め、故人への敬意を忘れません。火葬場へ向かう霊柩車の中で、たった一人のご遺族が故人との思い出をぽつりぽつりと語られる時、私たちはその言葉に静かに耳を傾けます。炉の前で最後のお別れをする時、ご遺族が心ゆくまで手を合わせ、感謝を伝えられるよう、私たちはその時間と空間を静かに守ります。費用や形式は、弔いの本質ではありません。大切なのは、残された人が、故人との最後の時間をどう過ごし、どんな想いを伝えられたかです。私たちは、たとえ一輪の花も飾れなくとも、心のこもった対応と、プロフェッショナルとしての丁寧な仕事で、その空間を最大限に温かいものにすることはできると信じています。経済的な事情が、人の最期の尊厳を損なうことがあってはならない。福祉葬に携わるたびに、私たちは社会のセーフティネットの一端を担っているという責任の重さと、この仕事の持つ深い意義を改めて胸に刻むのです。