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返礼品に添える挨拶状のマナー
葬儀の返礼品を贈る際、品物だけをお送りするのは片手落ちです。必ず添えなければならないのが、感謝の気持ちを伝える「挨拶状(お礼状)」です。この挨拶状は、葬儀が無事に終わったことの報告と、弔問や香典をいただいたことへの感謝を正式に伝えるための重要な役割を担っています。品物の相場や内容に気を配ると同時に、挨拶状のマナーを正しく理解しておくことが、礼を尽くしたお返しには不可欠です。まず、挨拶状に含めるべき基本的な内容を把握しておきましょう。一般的には、①頭語(拝啓など)、②葬儀への参列や香典へのお礼、③四十九日などの法要を無事に終えたことの報告(忌明けの報告)、④返礼品をお送りした旨、⑤本来であれば直接お伺いすべきところを書面で済ませることへのお詫び、⑥結語(敬具など)、という構成になります。そして、最後に日付と差出人である喪主の氏名を記します。挨拶状を書く上で、特に注意すべき独特のマナーがいくつかあります。最も重要なのが、「句読点(、や。)を使わない」というルールです。これは、儀式が滞りなく流れるように、文章が途切れないようにという願いが込められているとされています。句読点を使いたい箇所では、代わりにスペース(空白)を一文字分空けるのが一般的です。また、「時候の挨拶」も不要です。「拝啓 桜の美しい季節となりましたが」といった季節の挨拶は省略し、すぐに本題に入ります。さらに、「重ね言葉」を避けるというマナーもあります。「くれぐれも」「たびたび」「ますます」といった言葉は、不幸が重なることを連想させるため、弔事の手紙では使わないのがしきたりです。宗教によっても文面は異なります。仏式では「七七日忌(四十九日)」「永眠」「供養」といった言葉を用いますが、神式では「五十日祭」、キリスト教では「召天記念」といった言葉を使い、挨拶状もそれぞれの教義に沿った内容で作成します。返礼品の品物選びと同様に、挨拶状の作成も葬儀社やギフト専門店で相談に乗ってもらえます。テンプレートを参考にしつつも、故人や遺族の言葉で一文でも感謝の気持ちを添えることができれば、より心のこもった挨拶状となるでしょう。
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香典袋の表書きはなぜ薄墨なのか
香典袋の表書きを書く際、筆記用具の色は「薄墨」を用いるのが古くからのマナーとされています。普段使う機会の少ない薄墨ですが、なぜ弔事の場面でこの色が選ばれるのでしょうか。その背景には、故人を悼む人々の心情を表現する、日本ならではの奥ゆかしい文化が息づいています。薄墨を使う最も一般的な理由は、「悲しみの涙で墨が薄まってしまった」という様を表すためです。突然の訃報に接し、硯に涙が落ちて墨が薄くなってしまった、あるいは、悲しみのあまり墨を十分にすることができなかった、という深い哀悼の意を、墨の色で表現しているのです。これは、直接的な言葉で悲しみを表現するのではなく、間接的で控えめな形で相手の心情に寄り添おうとする、日本の美意識の表れと言えるでしょう。また、もう一つの説として、かつては急な弔事に際して、急いで墨をするため十分に濃い墨にならなかったという現実的な理由から、薄墨が使われるようになったとも言われています。いずれの説も、故人を悼む気持ちと、急な出来事であったことを示唆しています。では、どのような筆記用具を使えば良いのでしょうか。最も望ましいのは、硯で墨をすった毛筆ですが、現代では手軽な筆ペンが主流です。文具店などでは、弔事用の薄墨タイプの筆ペンが市販されていますので、一本用意しておくと非常に便利です。もし薄墨の筆ペンが手元にない場合は、通常の濃い墨の筆ペンやサインペンで書いても、必ずしもマナー違反というわけではありません。特に、四十九日を過ぎた法事で香典をお渡しする場合は、悲しみが少し落ち着いた時期であることから、濃い墨で書いても良いとされています。ただし、ボールペンや万年筆で書くのは避けましょう。これらは事務的な印象を与え、弔事の場にはふさわしくないとされています。表書きの色一つにも、故人への深い想いが込められている。このことを心に留め、丁寧に準備することが大切です。